とある弾き語りの人と話した
近江八幡駅前を歩いていると、ギターの音が聞こえてきた。ここは普段から弾き語りしてる人がわりと多い。
が、彼は引いているがなかなか歌わない。
話しかけてみると、彼は俺より一つ年上、三年前にメンバーが事情で遠くに離れてからバンドをやめ、久しぶりに今夜はギターを手にして「きまぐれに」いまここでギターを弾いている…という。
毎週月曜日ここでやっている、とか、そういうわけではないらしい。きまぐれに、だ。
いろいろ話すうちに、彼は俺を見て「きっちり弾きたいタイプじゃないですか?」と聞いてきた。
互いに名前も言わなかった、そんな一期一会を可能にするギターという存在は、本当に不思議に思う。
「どちらかといえば、アドリブやノリ、勢いで押せるタイプではないですね」と返すと「やっぱりそうですか」と笑み。
「僕はきっちり弾きたい人です」ってオーラが、どうやら俺の全身から滲み出てるらしい。
ほんと、あっさり見抜かれるもんだね。
河原町で会った、ゆあさまさやさんの時もそうだった。
「ギターしてる人ですか?」って、別にそんな事なにも思わせる格好してないのに見抜かれ、質問された。
俺もストリートライブしたら、こうした出会いがあるのかな。まぁする予定ないけどなんだか素敵だな。
続けて「俺は逆で…」と切り出す彼。
「やらない位なら、やったれ!って、それだけです」と苦笑い。それは、俺の目でも見て最初からわかっていた、彼は俺とはタイプが真逆だと。
彼ももともとバンドを組んでたらしい。ビートルズのステッカーがギターの内側に貼られてるのも見逃してない。
そして、一人で弾く理由は「毎日にムシャクシャするから」だそうだ。
弾かないと、やってられん、ということなのかな。でもそれはなんとなく、いや何と無くじゃないな、ハッキリと理解できたし、同意できた。
正直、バンドマンは周囲から見れば「ライブハウスというタバコ臭い箱」の中で「爆音」で「叫んだり飛び跳ねたり」して「機材にお金を使いまくる」イメージかもしれない。(偏見あるけど)
ハッキリいって、機材に投入した全ての資金は、多くの場合、全額まで到底回収できないままのバンドマンが多いはずだ。(ライブに出るのさえノルマが捌けず毎回赤字のバンドも少なくないだろうし)
なのに、なぜここにお金や時間を使うのか。
どんなに綺麗事と言われても根底には「音楽によって、お金以外に得るものがある」のだろうね。
それぞれの人が抱くそれぞれの答えが、それぞれ正しいなんて、万物に通ずるはずの数学的見解では、まずありえないけど……
それはそれで正解なんだろうなと思いながら、彼のギターを聞いてた。
「やるならオリジナルですよね、カバーもいいけど、まずやってみなきゃ、絶対その方がいい」
と話す彼。
今の俺なら、その意味わかるかも。
俺も頑張ろう、そう思えた。