【夢を追う子どもと親】
こんにちは。
より多くの人が様々な情報に触れることができるようになりつつある、この高度情報社会の世の中。
小学生くらいの年齢でも、大人と同じようにたくさんの情報を閲覧することが可能となっています。
伴って、SNSやWEBでの交流や情報だけで自分の世界が完結してしまっていたり、ポジティブな意見だけでなくネガティブな意見も多く知ってしまう機会が増え、夢を持たない若者が増えていることも社会的に懸念されています。
しかし、そんな環境においても自分の夢を見据えて一生懸命に頑張る子どもたちも多く存在します。
今回はそんな"夢を追う子どもと、それを想う親"について取材してきました。小学5年生の娘と、そのお母さんです。
今回はお母さんからお話を聞きました。
これを機に夢について一緒に考えてみましょう。
<今回の取材先について>
表現の世界は奥が深いものです。絵画や音楽、この記事を書く私もそうですが文字での表現もそうですね。
取材したのは"ダンス"で輝く小学五年生の娘を応援する、母親。
ダンスは全身を動かして、音楽などに合わせて舞う芸術です。その性質上、身軽さや振付を完全に覚える記憶力、なにより表現の世界ですので感性も必要となってきます。
思っている以上に総合的な表現力を要求される分野です。
夢を追う子と、その姿を応援する母の気持ちを取材してきました。
そこには、深い愛と情熱がありました。
<どう感じていますか?>
夢を追う、といっても小学五年生の女の子だけで夢を追うことは難しいでしょう。どうしても年齢的にも親の協力が必要不可欠となります。
一生懸命頑張っている娘を、母はどう感じているのでしょう。
Q.夢を追う子どもの姿をどう感じていますか?
A.「実現させてあげたいと思う。上の子ら(兄が二人)には何もしてあげられなかったから、できることなら夢を叶えさせてあげたいかな」
夢。
この言葉を口にするお母さんは、もともとこの質問をされることがわかっていたかのように、用意していたように……いや質問されるかどうかに関わらず普段から強く意識していたかのように、力強く即答してくれました。
この家庭は兄二人と、ダンスをしている娘の三人の子どもがいます。長男も次男も今は家を出ており、娘と旦那と愛犬の三人と一匹暮らしです。
兄には何もしてあげられなかった、この言葉から深い後悔を感じ、取材しながら私は言葉を失ってしまいました。
その分、娘にしっかりしてあげたい、その強い想いがひしひしと伝わってくる思いです。
「(ダンスを)頑張っているなあ、と思うけど、その分どうしても敵(ライバル)も多くて。(夢を)実現するにはただ"ダンスをしているだけ"では無理だよね、と思う」
娘はダンス教室に通っていて、教室内でたくさんのライバルたちと切磋琢磨しながら踊っています。
小学五年生ですが、中学生などと混ざって踊ることもあり、センターで踊ることも少なくない実力派。
しかし"ただ踊っているだけでは夢は叶わない"と、お母さんは語ります。
ダンス教室に通う他の子たちも、その親も様々な人がいます。親が率先してダンスしている子にアドバイスなどをしている親子もいますが、お母さんはダンスのアドバイスをするほどの知識を持っていないと言います。
アドバイスをすることはない、と話してくれました。それはただ「ダンスについてアドバイスする知識がない」という理由だけではないようです。
「親から"これをやれ"と言いたくない。親が先頭に立っている親もいるけど、私は子どもの意思を優先したい。自分が納得してダンスをするならする、納得して辞めるなら辞める、それは自分で選んでほしい」
そう話したうえで、もう一つ、力強く話してくれました。
「やるからには、やり切ってほしいよね、と思う」
信頼だと、思いました。
親から塾に通えとか習い事をしろとか、そうして命じる…というと言葉が強すぎますが、レールを敷いたり子どもの意思に関わらず親が選択する家庭も少なくありません。
しかしお母さんは娘の選択に、強い信頼を置いていました。やるからには応援する、だけどやるからには、やり切ってほしい。
それだけのシンプルなルールが、この親子にはありました。
「ダンスを一生懸命して、先生になって、スタジオを持つには勉強しなければならないけれど、それも強制しない。応援したいから、やりたいならやらせたい」
こう語る時、少し複雑な表情をしたことを私は見逃しませんでした。娘は小学五年生、年齢相応に「あれもやりたい、これもやりたい」と思う年ごろです。
塾に行きたい、そろばん習いたい、そういった希望はあってもダンスと学校の両立で時間はいっぱいいっぱい。別の習い事をするほどの余裕はありません。
また同級生と遊ぶ時間もなく、この取材のあとも学校から帰ってきた娘に宿題をさせながら晩御飯を作り、宿題が終わると晩御飯を食べさせ、着替えてダンスの練習へ出発するといいます。
ハードスケジュール故に、他の習い事だけではなく同級生の友達と遊びに行くこともままなりません。
「遊ばせてあげたいんだけどね。」と複雑な表情のまま、呟くように、話してくれました。
「ダンスという性質上、どうしても娘を必要以上に叱らなければならない場面も他の子に比べて多くなる。でも本当はそんなにガミガミ叱りたくない」
精神的に決して強くない娘は、それでもセンターで脚光を浴びながら踊る。精神的にも、他の友達と比べれば負担が大きいはずだということも、お母さんは知っています。
薬を飲みながらも、必死になって練習に明け暮れる娘に、小学五年生ながら強いプロ意識を持っているので、その意識に応えるように応援してあげたいと、お母さんは話します。
<どんなサポートを?>
朝から夕方まで学校、そしてそのあと夜までダンス、帰ってお風呂に入って寝る。そうした生活はどうしても体にも負担がかかります。
Q.どんなサポートをしていますか?
A.「とにかく食べ物やね。食べ物には気を付けてる。体にいいもの、ヨーグルトとか。あと糖分とか、気を付けてるかな。」
体にいいものを与えたい。
特に珍しい考え方ではありませんが、このシンプルな考え方こそ頑張る娘を支えるブレない軸なのだと感じました。
体調管理にも気を付けていると、話してくれました。自分ひとりでやっているわけではない、ダンス教室内でのチームプレイなのだという意識です。
風邪をひいたりしないよう、寒暖にも敏感になり、睡眠時間も確保して、常に万全の状態であるよう調整をかけると話してくれました。
親としての心配も当然そうなのですが、プロ意識をもってダンスと向き合う娘の姿勢を全力でサポートするお母さんの意思も伺えます。
<どんな時が大変ですか?>
大変なことは、きっと多いはずです。何も習い事をしていない小学生の娘でも大変なので、それに加えてダンスをしている娘であればより大変なはず。
Q.どんな時が大変ですか?
A.「人間関係かなあ。子ども同士の中で仲間と敵意じゃないけどライバル心があって、競争心があって……親同士もやっぱり人間関係が難しい」
ある集団があれば、そこに社会があります。学校の人間関係だけではなく、外部にも社会を持つことは娘にとっても、そして関わる親にとっても、気を遣う場面がその分増えるという状態です。
ダンスの先生にも様々な方針があり、仲間意識はいいがプライベートでは別に仲良くならなくてよい、という方針の先生もいるようです。
馴れ合いになってしまわないように。という考え方なのでしょうが、本当にプロさながら厳しい世界らしいことが伺えます。
ギスギスしていても楽しくないけど、ただ仲良しこよしでは最高のパフォーマンスができない。
そんな難しい選択を、常に迫られているのです。ストレスもありそうですが、何より人間関係の良し悪しが環境の良し悪しに直結するといっても過言ではない状況ですので、厳しい環境といえるのではないでしょうか。
つづく